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債務者格付とは

1.概要

(1)債務者区分にある正常先について言えば、世界的な超優良企業から中小零細企業まで幅広く存在し、そのリスクは大きく異なる
(2)そこで正常先についてはさらに細かく区分(8ランク前後)
(3)つまり、債務者格付とは、財務分析等の客観基準により正常先の詳細分類をも行った債務者区分

2.債務者格付の基本的考え方

(1)金融検査マニュアルでは、融資先の業況・財務内容から返済能力を検討するとされる
(2)端的に言えば債務超過や返済不能の状態に陥る確率がどの程度かという視点

3.債務者格付の手段

(1)財務分析
  1. 各種財務指標について統計的に裏付けられた配点を定め、その合計点で一次判定
  2. 資産の含み損のチェックにより一次判定結果を補正

(2)定性分析
  1. その会社の商品競争力、技術力、業界全体の状況、経営管理能力、経営状況の開示協力度・決算書の信憑性等決算書上に数字として現れなくとも潜在的にその会社に影響を及ぼすものをプラス評価又はマイナス評価して調整
  2. 評価する人間の主観によって左右されるため、財務分析結果(一次評価)でボーダーラインにある先を中心に調整的に行うケースが多いもよう
  3. また、評価にあたっても主観を極力排除するため、当該項目につき特に目立つものがなければ「普通」として中立評価とし、誰がみても明らかに特記すべきある場合のみ理由を付して「優れる」又は「問題あり」等でのプラス評価又はマイナス評価で財務分析結果を調整してランクアップ又はランクダウンさせる手法が一般的
  4. ボーダーラインにある企業にとっては最終的な決め手になることもありえる。
    ・特に業績低迷の理由が一時的要因なのか構造的要因なのかは格付上重要な意味があるので、その要因把握にこの定性評価が活用される
    ・経営状況の開示への協力度として決算業績ヒアリングに非協力的であれば開示できない何らかの理由、例えば不良資産や粉飾決算の疑いありとされ、格付けが下方修正されることもありえる
    ・決算書の信憑性が疑われると一番問題となる

4.財務分析に用いる重要指標

財務分析は、各行により使用する指標が異なるが、下記に挙げたものは上記1の金融検査マニュアルに沿った基本的考え方を勘案すれば重要指標として使用されているものと思われる。

(1)元利金返済能力
a.債務償還年数 =有利子負債残高

当期利益+減価償却費-配当等社外流出額
・返済能力からみて借入金等が過多ではないかを表す指標で、分母は2~3年の平均金額を使用するところが多い模様
・最近は、分子の有利子負債残高から必要運転資金として下記算式金額を控除したものを使用している

運転資金=売掛金残高+棚卸資産残高-買掛金残
b.利払い能力(インタレストカバレッジレシオ) =(営業利益+受取利息)

支払利息
支払うべき金融費用がその支払原資である営業利益をどの程度圧迫しているかの指標

(2)財務内容
a.自己資本比率 =
自己資本

総資産
返済の必要のない自己資本が全体資本調達に占める割合で、財務健全性の主力指標
b.有利子負債自己資本比率 =
有利子負債残高

自己資本
自己資本を基準物差しにして、借入金等が過多ではないかを示す指標

c.経常収支比率又は営業キャッシュフロー
経常収支比率=経常収入(≒キャッシュフロー計算書における営業収入)

経常支出(≒キャッシュフロー計算書における営業支出)
営業活動におけるキャッシュの動きであり、会計上の損益とキャッシュとの差異を比較するのにも使用

(3)業況程度
a.総資本営業利益率 =営業利益

総資産
b.売上高営業利益率 =営業利益

売上高
会社の収益力がどの程度健全かを表す指標

5.債務者格付結果と融資方針・貸出金利との関係

(1)債務者格付における要管理先・破綻懸念先・実質破綻先・破綻先への貸出金等の与信残高は不良債権の位置づけ
→ 要管理先以下の格付の会社に対しては新規資金の融資対応は行わない

(2)銀行は債務者格付により融資方針・貸出金利を設定する
融資方針は銀行毎の格付区分数や基本方針・経済金融情勢により当然異なるが、イメージ的には以下の感じ
格付融資方針例
正常上位ランク無担保でも積極的に残高を増やす
正常中位ランク今後の経営状況・担保・収益性等を見極めながら残高を増やす
正常下位ランク有担保や信用保証協会保証を原則に可能であれば残高を増やす
要注意信用保証協会保証を原則に慎重に是々非々で対応する
※格付が下位になるほど金利は高くなる

6.節税対策と債務者格付

(1)利益圧縮型節税対策を行うと決算書が悪化し、これが債務者格付を下げる可能性を持っている
→ 節税を考える場合、その方法が税務上適正か否かに加え重要財務指標がどの程度悪化するのかを事前に吟味することが必要
→ キャッシュアウトを伴う節税策では格付低下と相俟って次年度以降の資金繰りに支障をきたす恐れあるので次年度以降の中期計画でも吟味すべき

(2)当期利益で限りなくゼロに近い黒字が節税と信用維持を両立させる理想の決算ではない
→ 限りなくゼロに近い黒字では、重要財務指標の点数も限りなくゼロに近いため格付的には要注意レベル